売上が年々減少している印刷会社の売却事例

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売上が年々減少、市場も衰退産業で将来性がないと経営者が思い込んでいた会社が、思わぬ高い価格で会社を売却できた印刷会社の事例になります。

売却会社データ:印刷会社

売却会社データ ・売上げ:5億円
・印刷業/50年
・現社長は80歳近い創業社長
・アルバイトを含めて50名の従業員
・銀行からの借入金4億円
会社を取巻く環境 ・売上げが年々減少
・遅かれ早かれ、銀行への返済に行き詰まる
・市場は衰退産業

この会社は、写真集や高額商品の販売促進本など、高度な技術が必要とされる高級印刷業を50年にわたって営んできました。

業界全体としては、紙媒体の減少、DTP化による印刷コストの削減によって市場は縮小傾向にあり、この分野の同業の会社の利益率も総じて悪化の一途をたどっている状況でした。

【背景】事業承継か?会社売却か?銀行から迫られる選択

会社の財務状況は、機械等の設備投資で銀行借入が4億円まで膨らんでいる状態。さらに、内部留保は3000万円と非常に薄く、古くから保有する大きな含み損のある本社の土地だけでは担保は間に合わず、オーナー経営者の自宅を塚担保にして、なんとか銀行の信頼を維持している状況でした。

銀行からは、事業の大幅縮小、本社移転、さらに現在の本社の土地を売却して銀行からの借入金を大幅に削減すること、さらに取締役である社長の息子に事業承継する再建策を提案されていました。

表面的にはもっともな再建策のように見えますが、事業を大幅に縮小することで残した事業は継続性があるのか?肝心の部分が不透明であり、実態は債権回収にも見えます。

社長は銀行からの再建策を求められたことがきっかけで、息子に事業承継をするか、廃業するか、第三者に会社売却することも含めた事業承継について考えるようになりました。

【磨き上げ】赤字の原因はなにか?

いわゆる「衰退産業」に帰属している中小企業の売却は、なかなか簡単ではありません。さらに、売上減少・赤字状態ではさらに難しくなります。

しかし会社の内情を調べてみると、主要な顧客は長年にわたって変わることなく、その上ある程度の利益率も維持されていました。

さらに調査を進めて、顧客ごとの売上げや粗利益について過去10年にさかのぼって整理して分析をした結果、主要顧客の利益率は業界平均を大幅に上回っていることがわかりました。

売上げ減少の要因は、固定客の減少や利益率の問題ではなく、スポット的な取引き顧客の減少でした。その減少を補うために、採算を度外視した価格で新規顧客から受注を受けていたため赤字に陥っていることがわかりました。

 赤字の原因は、スポット的な取引き顧客の減少と採算を度外視した新規受注
 主要顧客の利益率は業界平均より上、主要顧客の減少も見られない

【磨き上げ】会社の強みはなにか?

この会社の強みを見つけるために、主要顧客の以下の2点を中心にさらに調査を進めました。

・なぜ、長年にわたり主要顧客との取引きが続いたのか?
・なぜ、高い利益率を維持することができたのか?

すると、主要顧客がこの印刷会社に長年依頼をする理由がわかってきました。

長年取引をしている主要顧客の依頼物は、高級マンションの販促物や高級商品の販売カタログ、美術品の写真集などがメインでした。これらの高級商品の印刷物は、色や質感がとてもデリケートなものになり、この印刷会社はデリケートな印刷物が得意だという会社の強みが見つかりました。

また、撮影には最高水準の機材を使用、自社の撮影スタジオには細心の配慮がされていました。DTPでは困難な特殊な製版技術がきちんとスタッフに伝承できていることから、主要顧客は安心して継続的に依頼をしていました。

 デリケートな印刷物が得意な高い技術力
 顧客満足度が高くリピート率が高い
 特殊な製版技術もスタッフに受け継がれている仕組み

このように、会社の問題点や強みを見つけることを「磨き上げ」といいます。
会社の磨き上げに関しましては、以下の記事を参考にしてください。


【方針の決定】第三者に会社を売却

会社の強みを見つけたら、次は今後の戦略について検討をはじめました。

営業によって新規顧客が獲得できるのであれば黒字化は可能ですが、自力での営業は難しく、主要な顧客も成長産業ばかりではないため、今後の取引量は縮小していく可能性が高いことから、資本力のある第三者に売却する方針に決定しました。

社長の会社売却の条件は、従業員の雇用継続と顧客との関係維持でした。

売却条件
・顧客との関係維持
・従業員の雇用維持

もっとも興味を示すのは、同業の可能性が高いと考えられます。

しかし同業に会社を売却するケースでは、拠点の統廃合が生じやすく、結果として人員が整理される可能性があります。実際、同業社は買収に興味を示しても、拠点や雇用の維持がネックとなり話はなかなか進みませんでした。

 同業へ売却するケースでは、人員整理される可能性がある

【M&A成立】異業種へ会社を売却

同業以外にも異業種にもアプローチしました。しかし、衰退産業の印刷業を内製化する理由が見つからず、なかなか買い手企業が見つからない状況が続きました。

しかし、粘り強くアプローチを続けた結果、不動産、自動車、宝飾品など高級商品の子会社を複数傘下に持つコングロマリットが興味を示しました。

コングロマリットとは?
直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体。複合企業(ふくごうきぎょう)やグループ会社(グループがいしゃ)とも呼ばれる。

そのグループは売上げ1000億円、ちょうど印刷コストの削減が経営課題の一つになっていました。グループ内の発注だけで黒字化でき、自社の印刷物の品質向上も実現できることからM&Aが成立しました。もちろん社長の売却条件である従業員や顧客との関係維持も将来にわたって約束されました。

買い手会社が評価したポイント
 主要顧客は長年の固定客
 主要顧客の売上げは安定、利益率も高い
 粗利益率は業界平均を大幅に上回っている
 他社に乗り換える障壁は高い →主要顧客は維持されると判断
 異業種からは「一緒に事業を伸ばせる魅力的な会社」

M&A田中

事業に将来性がないと思っても、とくに異業種には一緒に事業を伸ばせる魅力的な会社だと評価されるもあります。

誠実かつ長く事業を継続している会社には、継続できるだけの会社の強み、会社の価値が必ずあるはずです。

そのためには、買い手企業にアプローチする前段階の会社の磨き上げが重要になります。磨き上げで会社の価値を見つけだし、しっかりと買い手に表現することの重要性を改めて認識することになった会社売却の事例になります。

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