【鉄則】失敗しない会社の売却条件の整理の仕方

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会社の売却条件を整理する

M&A岡本

会社の磨き上げの方針、方向性が見えたら、M&A会社と売却条件の整理をします。磨き上げに関してはこの記事を参考にしてくださいね。

長手さん

いよいよ具体的に動き出すって感じがしてくるね!

取引の手法を検討する

M&A岡本

まずはじめに、株式の売却なのか、事業譲渡なのか、会社を分割して売却するのか、取引の手法を検討します。

取引の手法は、株式の売却がもっともシンプルな方法ですが、何かしらの理由がある場合は事業譲渡という形態がベストの場合もあります。

会社全体なのか、一部の事業なのかを選択すると、それに応じた価値を評価することになります。(*相続税法上の評価ではありません)価値の評価が算出されたら、同時に売却の主要な条件や希望事項をまとめます。

この主要な条件や希望を交渉の途中に出したりすると、買い手会社は嫌がります。譲れない条件があれば最初から出すようにしてください。

主要な売却条件の整理をする

取引手法と価値評価を定めたら、売却に関する希望条件を整理します。

まずはM&A会社による価値評価を参考にして、希望の売却価格を決めます。株主が複数いる場合は、他の株主の理解を得られそうな金額を探ります。同時に、売却金額の支払い方法についても決めます。

売却金額の支払い方法
少し安くなっても一括払いを求める
買い手側のリスクの不明瞭さを理由に分割払いを要求してきたときは認めるのか
分割払いを認めるとき、支払いのタイミングは半年なのか1年後なのか
対価の支払いは現金に限るのか
買い手側が自社株での支払いを提案してきたときは認めるのか

このような条件を一つひとつ決めていきます。

これらのほかにも、手取りが最大化し、できる限りトータルの課税が最小化される方法での受取りの希望、株式をすべて売却した後も事業に協力する立場で会社に残る場合は、将来発生する収益の還元*を希望するなど、条件を決めていきます。

*将来にわたって一定の成果が出たとき、ボーナスとして現金やストックオプションでもらうことをアーンアウト(earn out)といいます。

長手さん

売却金額の受取り方法にもいろいろあるんだね…!

M&A岡本

そうですね。どの方法が一番適切なのか検討する必要があります。

M&Aによるシナジーは買い手側だけに帰属する利益ではなく、売り手側の寄与があってはじめて成り立つものです。その一定量は売り手側に帰属させる交渉が大事になります。こういった目線は売り手側にも必要です。(有効な機関は長くて3年程度)

売却金額の交渉をするとき、この将来収益が売却価格に含まれるのか、含まれないのかを確認するようにしてください。

例えば、交渉の過程で会社の評価が5億円、シナジーによる将来収益を2億円と見積もった場合、7億円で売却できた場合は完璧でしょう。しかし、将来収益を含まない5億円で買収金額が提示された場合は、シナジー価値の配分を求める交渉や買収金額の算定の考え方の説明を求めるようにしましょう。

M&A岡本

買収金額の詳細の開示を求めても断られるケースもありますが、買収の提示金額が低く、説明も不適切な場合への対応を明確にするためにも、売却条件の事前整理はしっかりと行うようにしましょう。

売却後の経営体制や従業員待遇の希望条件を決める

売却後の経営体制の希望条件について決めていきます。

 

希望条件
経営陣 ・経営陣に登用するために育成してきたので役員を外すことはやめてほしい
・自分も一定期間残って事業が完結するまでやりたい etc.
従業員や取引先 ・従業員の雇用体系を維持してほしい
・買い手側の基準に変えて構わない
・取引先や仕入先との関係を一定期間は維持してほしい
・すぐに買い手の取引先に変更して構わない etc.
拠点や資産 ・創業の地から少なくとも10年間は移転しないでほしい
・現在の主要な社員が社員が退職するまで拠点を残してほしい etc.
その他 ・商品やブランドの統廃合は買い手側に一任する
・個人保証を抜いてほしい
・個人で差し入れた担保を解除してほしい etc.

これらの条件が受け入れられるかは別として、希望する条件をまとめます。ただし、こうした条件の提示は買い手側にとって制約になるので、価値を減価させる可能性もあります。一方で、売り手側の取引先や従業員が長中期的に担保されることが、売り手会社の収益基準を維持すると判断されれば、評価が向上する場合もあります。

長手さん

条件の提示もいろいろと多岐に渡るんだね…!

M&A岡本

条件提示は一長一短があるので、プラスマイナスの効果を含めて検討をしてくださいね。

案件情報・開示情報を整理する

M&A岡本

条件等がまとまったら、買い手側に売り手会社の概要を簡単に示す「釣書(つりがき)」を作成します。このとき、売り手側の会社名は伏せた形になります。

「釣書」は「ノーンネームタームシート」あるいは「ティーザー」と呼ばれ、M&A会社が作成します。この時、注意をしたいのが会社名を特定されないような内容にすることです。例えば、「広島レンタカー売上20億円前後創業以来増収増益」と書けば、会社名をほとんど特定されることはありません。

どの範囲の情報までを公開するか注意が必要

インターネットの情報を見ると、見る人が見たら会社名が特定されてしまう釣書が並んでいます。売り手と買い手をマッチングさせるサービスのM&Aサイトの利用を否定するわけではありませんが、公開情報の内容にはとくに注意してください。

M&A岡本

ノンネームタームシートによる情報開示には細心の注意を払う一方で、買い手の興味を惹く情報やコメントを入れるようにしましょう。

秘密保持契約を締結してから情報公開

ノンネームタームシートに興味を持つ買い手会社が見つかったら、秘密保持契約(守秘義務契約)を締結したうえで、企業概要書(インフォメーション・メモランダム、IM)を売り手側が買い手側に提示します。このIMも、どこまでの情報を記載するかを決めておく必要があります。

IMは会社名を公表します。そのため、取引先の情報や取引先に対してどれだけ売っているかなどの売上げ情報まで書くか、開示する相手によって内容を変えるかどうかなどの検討も必要になります。

守秘義務契約を結ぶため、基本的には情報漏えいはしないはずです。しかし、買い手会社の社内でも複数人が情報を見ますし、買い手側と契約しているM&A会社も見ることになります。完全に秘匿されるとは思わないほうがいいでしょう。

M&A岡本

このような前提で考えると、かなり交渉が進んだ段階までは、機密情報に近い情報はIMでは開示しないほうが無難です。

候補先の選定

候補先の選定は、M&A会社と相談をしながら決めます。このとき注意をしたいのが、取引先や自分の知っている会社にコンタクトするかどうかを決めておくことです。取引先で資金力のある会社、取引歴が長く業績が好調な会社は、有力な候補先の一つとして考えてみてもいいかと思います。

候補先のリストが出来上がったら、選定が特定の業種に偏っていないか、同業に偏っていないかをチェックしてください。思わぬ異業種が会社の価値を見出してくれることもあるので、候補先は同じ業界だけに絞る必要はありません。

M&A岡本

同じ業種の場合は、統廃合の可能性が高いので、従業員や取引先にとってはデメリットになる可能性もあります。

むしろ、異業種は新しい事業分野に参入したいと思って買収をするので、売り手会社を基点に広げていこうと考えるので、現在の陣営を維持する確率は高いと考えられます。

よくあるトラブル事例)複数依頼や情報漏えいによるトラブル

会社の売却でトラブルに発展してしまうよくある事例

売却価格ばかりが気になり、それ以外の条件を交渉の後半に言いだし、買い手側との間で「こんな話は聞いていない、最初から言ってくれよ」と破談になるケースは少なくありません。

また、複数のM&A会社に並行して動いてもらい、交通整理ができなくなってトラブルになることもあります。売却の条件がきちんとまとめっていない状態で、複数のM&A会社が同じ買い手会社に売却話を持ち込んだ結果、M&A会社によって条件が異なっていたといったケースもあります。

売却話が社内関係者に漏えいするのも大きなリスクです。会社を売却するらしいという噂が広まると、従業員の士気の低下は避けられません。会社の磨き上げでM&A会社が社内に立ち入るとき、どういった立場で入るかについて決めておく必要もあります。

よくあるトラブル
交渉の後半で条件を言いだすトラブル
複数のM&A会社に並行して依頼するトラブル
社内関係者に情報が漏えいするトラブル

M&A会社は顧客に忠実か?

M&Aの担当者にも収益ノルマがあるため、業者への報酬体系が売り手会社の利益を阻害する体系になっていないか確認する必要があります。

M&A会社には仲介会社と助言会社がありますが、そもそも仲介会社は契約当事者双方にとって忠実であり得るのか、買い手会社の発掘までが業務なのか、交渉や条件の取りまとめまで範囲とするのかよく確認するべきです。

*仲介会社と助言会社の違いは以下の記事をご覧ください。

M&A岡本

追加費用の発生、M&A成約後に想定外の損害賠償に見舞われないためにも、M&Aに必要な業務を理解し、M&A会社の業務範囲を確認するようにしてください。

契約前にM&A会社が提示する「売却参考価格」には注意せよ

M&A会社が売り手会社と契約をする前に、売り手会社の概要情報に基づいて概算譲渡金額やイメージする候補先を参考情報として提示するのが一般的です。ただ、これはあくまでも参考情報なので、そのまま受け取るとトラブルに発展する可能性があります。

実際のM&Aのプロセスに入ってから、当初に挙げていた候補先にコンタクトできなかったり、参考価格からほど遠い金額を提示されたり、劣悪な条件を押し通されて会社を売却してしまった事例もあります。

M&Aの専任の契約をするために、通常では考えられない金額を提示し、売却する意向のなかった経営者を売却に誘導しようとしているため、このようなことを行うM&A会社もあります。

無益なプロセスに入ることを避けるためにも、売り手会社は自身の会社の適正な想定価格を知っておくことが重要です。売却を検討するときは、少なくとも複数のM&A会社から提案を受けるようにしてください。

長手さん

想定外の高い金額で売却価格を提示されたら、その気になっちゃうよね。。

M&A岡本

通常の評価では5億円程度なのに、その6倍の30億円を提示されて、その気になってしまった売り手会社もあったりしました。当然、売却は成立しませんでしたが。。

M&A岡本

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売却条件をきちんと整理をしておかないと、トラブルに発展する場合があります。主要な売却条件や希望はしっかりとまとめておく必要があります。

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