磨き上げの重要性と成功事例

この記事は約 160 秒で読めます。

磨き上げは買い手会社との交渉をはじめる前に、売り手側の会社に存在する問題や課題がないかを自社で調査をして改善する一連の作業をいいます。

この磨き上げを行うか、行わないかによって、会社の売却価格や条件などに影響を与える大切な作業になります。

長手さん

会社の問題や課題って、どんな作業をして見つければいいの?

M&A岡本

ここでは、磨き上げの具体的作業や磨き上げで最良の条件で会社を売却した事例をご紹介しますね。

磨き上げを行うタイミング

会社の磨き上げは、会社を売却する流れの中のステップ2のタイミングで行います。

ステップ1 M&A会社と契約をする
ステップ2 事業計画を策定する ←ここで会社の磨き上げ作業を行います
ステップ3 買い手会社を探す
ステップ4 買い手会社と交渉をして精査する
ステップ5 売買契約を結ぶ

会社売却の全体の詳しい流れは以下のページを参考にしてください。



磨き上げは、「会社の情報を整理する作業」と財務や実務の面から「会社の価値を高める作業」と2つの作業を行います。

それぞれの具体的作業を以下にまとめました。

磨き上げ1)会社の情報を整理する作業

まず、磨き上げでは「会社の情報を整理する作業」を行います。

法務、財務、組織・人事・労務の視点から、会社売却成立を阻害するような要因はないかどうかを調査します。

法務からの視点 ・株主は適法に株式を取得しているか
・会社として成立させるための基本的事項が有効に守られているか
(決議や登記手続き、諸規則・規定の整備、許認可の届け出等)
・重体な法令遵守違反がないか
・主要な取引先との契約が実態に即して締結されているか
・重要な資産や技術の使用が法的に有効な状態になっているか
財務・税務からの視点 ・不適切な会計処理や税務処理はないか
・未払い残業代ほか簿外債務はないか
・訴訟ほか偶発債務の恐れはないか
・循環取引、継続的に不当な値引きや過剰仕入等、不適切取引や不利益取引はないか
組織・人事・労務からの視点 ・解消しがたい不当な労働環境で勤務させられていないか
・心身ともに不健康な社員が多く、離職率が非常に高い状態になっていないか

これらの事項に該当箇所がある場合、正常の状態に戻す、または、直す手順が明確になっていないと、基本的にM&Aのプロセスに入ることが出来ません。

長手さん

なるほど!いろんな視点から会社の基本的なことを調べていくんだね!

M&A岡本

上記は一部のチェック項目になりますが、中小企業のM&Aに携わっていると、ほとんどの会社で何らかの阻害要因となる問題が発見されます。速やかに修正することが大切です。

磨き上げ2)会社の価値を高める作業

磨き上げのもう一つの作業は、財務や実務面を調査して会社の価値を高める作業になります。

取引契約の整備、月次決算の導入、各種経営管理指標のデータ化、社内規定の整備、内部統制の充実などを必要に応じて実行します。同時に、購買手法の改善、金融機関取引の整備、固定費削減の実施は検討すべき事項になります。

M&A岡本

とくに、顧客や仕入先との契約書の整備や、取引条件の改善や明確化、月次決算は必須事項になります。

財務の磨き上げ3つのポイント

財務面の磨き上げは、以下の3つのポイントがあります。

損益を改善する ・不採算部門・不採算商品・不採算サービスは廃止する
・無駄な経費は改善する
・ボリュームディスカウントで仕入れや購買コストを抑える
・合法的に効果的な節税対策を行う
資本効率を上げる
(賃借対照表の改善)
・事業に必要のない資産や遊休資産はできるだけ処分する
・有利子負債は返済する
・多額の内部留保がある場合は、税務面での不利益がないようであれば配当の払い出し等を検討する
キャッシュフローの改善 ・資金回収の早期化はできる限り努力する
(資金回収サイトを短くすることは、回収リスが軽減される効果のほか、DCF法で評価される場合、非常に有効になる
【参考記事】会社の売却価格はどうやって決まる?
月次決算と事業計画の整備は必須

会社の売却先候補先を広げるためにも、月次決算の策定は磨き上げで重要な部類に入ります。現在、月次決算を行っていない場合は、数カ月から半年ぐらいをかけて、月次で経営管理をする仕組みを定着させることが必要です。

また、将来の事業計画をしっかりと立てることも重要です。M&Aでは、売り手会社の収益の見通し、設備投資や人材計画、商品の市場への投入計画、研究開発などの売り手会社の考えを理解するために、買い手会社は必ず事業計画の開示を求めますし、事業計画を参考にして売り手会社の価値評価を行います。

M&A岡本

可能な限り具体的な事業計画を作ることも磨き上げでは重要な項目になります。

実務の磨き上げ2つのポイント

より高く売れる会社にするために財務の磨き上げのほかに、実務の磨き上げも行います。会社の強みをみつける作業になりますが、実務の磨き上げには2つのポイントがあります。

自社のエッジを立てる ・「○○だったら、あの会社」という価値があるか
・「こんな会社にアプローチできている」
・「売上げにはつながっていないけど、こんなノウハウがある」

このように、自社の特徴について、事業の本質や広がりを想像できるような表現ができればOK

見えない価値を
「見える化」「使える化」する
・販売情報、顧客情報などをデータ化
・標準業務についてのマニュアルを作っておく
・見える化した価値を「使える化」しておく

顧客・取引先・研究開発などの分野で、可視化されていない会社の価値を「見える化」して「使える化*」すること

*「使える化」とは、例えば他社の受託開発で開発した技術・ノウハウを異業種の第三者に転用できるように許諾をとっておくなど、買い手企業が使えるようにしておくことをいいます。

長手さん

ふう~、磨き上げってやることがたくさんあるんだね…!

M&A岡本

そうですね。磨き上げはやることがたくさんありますが、買い手会社に「うちの会社はこんな魅力があるんですよ~」と伝えるための情報を整理する作業になります。

M&A岡本

この作業を行うことで、買い手会社候補が増えたり、条件や売却金額の交渉などを進めやすくすることができます。

長手さん

この磨き上げって、誰にお願いすればいいの?自分たちでやらなきゃいけないの??

M&A岡本

実際に磨き上げを行うには、わたしたちのような外部の専門家と一緒に、売り手会社の社内関係者と行うのが一般的です。

磨き上げは誰が何を行えばよいのか?

多くの場合、自社で磨き上げの課題を見つけることは容易ではありません。一般的には、社内では経営者と管理担当部署の一部、そしてM&Aアドバイザー、調査で必要とさせる専門性によって、弁護士、公認会計士、税理士などと一緒に磨き上げを行います。

磨き上げの担当者がやるべきこと
社内の担当者がやるべきこと ・株主総会や取締役会、重要な経営会議の議事録の整備
・重要な契約書や社内諸規則・規定の一覧整理や手続き促進
・社員の出退勤時間を把握する仕組みの構築
・月次試算表の早期作成体制の整備、予実管理体制の運営
・事業セグメントや製品・サービスごとの収益データの整備
・顧客や仕入先の情報や取引情報の整備
・事業計画の策定
外部の専門家に協力を依頼するべきこと ・株主に関する事項
 →会社売却に向けた株主への事前説明、理解の促進
 →会社売却への議決権集約に向けた株主間契約の締結、株式の集約 etc.
・法務に関する事項
 →会社の基本的事項の有効性の確認と対応策の策定
 →会社売却に影響する特殊事項の確認と対応策の策定
 →重要な事業用資産の権利確認と対応策の策定 etc.
・財務に関する事項
 →会計・税務処理の適正性確認と対応策の策定
 →簿外債務や偶発債務の有無の確認と対応策の策定
 →財務構造の改善点の確認と対応策の策定 etc.
・組織、人事、労務に関する事項
 →組織、役職の職務権限内容、稟議・合議プロセスの状況確認等
 →労務環境の状況確認と対応策の策定 etc.
・事業に関する事項
 →不採算事業、製品、サービスの調査と対応策の策定
 →事業計画の作成状況の確認と策定支援 etc.
・経営管理に関する事項
 →経営管理状況の確認と高度化支援
 →見えない価値の見える化支援 etc.

長手さん

これは、やるべきことがたくさんあるね…!!!汗

M&A岡本

磨き上げに取り組んでいれば、自社の強みと価値がメイクになるため、余裕を持って買い手会社との交渉に臨めるので、ここは頑張りどころですね!

M&A岡本

それでは最後に、会社の磨き上げを行ったことで、予想以上の金額で会社を売却できた成功事例をみてみましょう。

磨き上げの実行で予想以上の金額で売却ができた成功事例

会社情報 ・老舗の化学品材料メーカー
・売上30億円
・営業利益は毎年1億円計上
会社売却の背景 ・オーナー経営者に後継者がいないため会社売却を決断
・中長期的に業界のパラダイムシフトが予測されるため大手資本の傘下に入りたい
売却条件の希望 ・従業員の雇用維持、労働環境の改善
・効率化のため従業員がリストラされるリスクがあるため同業への売却は避けたい
・売却価格よりも従業員の労働条件、雇用条件を守ってくれる会社に売却を希望

こちらの会社は安定的な業績を上げていましたが、後継者がいないこと、中長期的に業界のパラダイムシフトが予測されるため、あえて好調な時期に大手資本の傘下に入ることを企図して、会社売却の準備に入りました。

「技術」を「見える化」したら高評価に!

こちらの会社を磨き上げで調べていくと、研究開発部門が多くの大手企業の試作品を受託していることがわかりました。さらに、大手企業が求める極めて高い水準の要求をクリアする技術、そして広く普及している製品の基礎をこの会社が担っていることがわかりました。

この研究開発部門の技術やノウハウを磨き上げで見える化することに着手した結果、大手商社に予想以上の金額で会社を売却することが出来ました。

磨き上げで発見 研究開発部門が多くの大手企業の試作品を受託しており、極めて高い水準で顧客の要求をクリアする技術、かつ、広く普及する製品の基礎を担っていることを発見
会社の価値の
「見える化」
研究開発部門の情報の整理を行い、どんな分野の製品開発に強いか明確に示し、保有する技術とノウハウを丁寧に記述
会社の価値の
「使える化」
研究開発部門には多種多様な設備が充実しているため、生産のリードタイムが短く多品種小ロットの製造に適しているいるため、買い手企業はさまざまな新製品を企画しやすい環境を実現できる
買い手会社の評価 会社の収益状況から算出される価値評価に加え、買い手会社で実現したい事業から得られるであろう収益(シナジー効果)まで評価されることに成功。
買い手会社の製品事業への新規参入と新製品の開発・製造が実現した発展的なM&Aが成立。
成功のポイント 技術やノウハウを見える化した結果、シナジー効果までも評価されることに成功
どんな分野の製品に強いかを磨き上げで明確にした
異業種の会社に売却することで、従業員や取引先の関係を維持するこができた

長手さん

ねえ、おかちゃん~!このケースはいくらで会社を売却できたの~??

M&A岡本

売却金額は気になるところですよね…!ただ、我々は守秘義務があるので、金額は言えません…!汗

長手さん

ごめんごめん、そりゃそうだよね!笑

M&A岡本

これは研究開発部門の技術やノウハウを「見える化」した磨き上げの成功事例になります。

この「見える化」は研究部門に限ったことではなく、例えば、商品企画の歴史、マーケティングの成功、失敗の記録を整理して見える化することも、買い手会社にとって思わぬ価値につながるケースもあります。

長手さん

シナジー効果まで評価されるって磨き上げってすごいね…!!!

M&A岡本

そうなんです。もし磨き上げを行っていなかったら、会社の収益から算出されただけの価値評価でしたが、磨き上げを行うことでシナジー効果も評価された金額で会社を売却することができました。

長手さん

うちの会社も磨き上げで、ピッカピカにしたいぞ!!!

M&A岡本

今回の事例は「技術やノウハウ」の磨き上げでしたが、技術やノウハウ以外にも、会社の強みを見つける磨き上げのポイントがあります。次回は、実際の事例を交えながら詳しくご紹介しましょう!

会社売却の相談をする(無料)

「会社を高く売る方法」eBook無料ダウンロード

  • M&A会社の選び方、会社を高く売る方法、会社売却の成功事例とポイントなど、会社売却のプロセスに入る前に経営者が知っておきたいことをまとめました。お気軽にダウンロードください。
 
Verification

これまでのマンガで学ぶ事業承継
第一回 事業承継をする前に知っておきたいこと
第二回 事業承継は後継者によって3種類ある
第三回 M&A会社の選び方 ~仲介・アドバイザリー会社の特徴
第四回 「磨き上げ」の重要性と成功事例
第五回 会社の強みを見つける“磨き上げ”5つのポイントと事例
第六回 失敗しない会社売却条件の整理の方法とトラブル事例

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。